企業の信用度アップと企業価値向上

認定で企業の信用度アップ!中小企業の企業価値を高める事業継続力強化計画

信用度アップ 企業価値向上

地震・水害などの自然災害に加え、感染症、ランサムウェアなどサイバー攻撃によるサプライチェーン寸断まで――中小企業の事業継続を脅かすリスクは多様化しています。
本記事は「事業継続力強化計画(通称:ジギョケイ)」を調べている経営者・総務/情報システム担当者・管理部門の方に向けて、制度の概要、認定による信用度アップと企業価値向上の考え方、そしてサイバー攻撃を含めた実務的な対策と申請の進め方をわかりやすく整理します。
補助金・税制優遇・金融支援を“使える形”で取り込み、取引先や金融機関に説明できる強靭化の根拠を作ることがゴールです。

事業継続力強化計画とは?BCPとの違いと「信用度アップ・企業価値向上」につながる理由

事業継続力強化計画は、中小企業が災害やサイバー攻撃などの緊急事態に備え、重要業務を止めない・早期復旧するための「実行可能な対策」を計画として整理し、国の認定を受けられる制度です。
ポイントは、単なる防災マニュアルではなく、経営としての優先順位(何を守り、どこまでを何時間で復旧するか)を明確にし、設備・IT・人・取引先を含めた対策を“見える化”できる点にあります。
認定を受けると、対外的に「備えている会社」と説明しやすくなり、入札・取引審査・融資などでの評価材料になり得ます。
結果として、事故や停止の確率を下げるだけでなく、説明責任を果たせる体制=信用の源泉を作り、企業価値向上につながります。

中小企業庁の制度概要:目的・対象業種・政府が求めるレジリエンス

制度の目的は、中小企業の「事前防災・減災」と「早期復旧」を後押しし、地域経済やサプライチェーン全体のレジリエンス(回復力)を高めることです。
対象は原則として中小企業で、製造業・建設業・卸小売・サービス業など業種を問わず活用できます。
政府が求めるのは、立派な文書よりも“実装”です。
例えば、緊急時の指揮命令系統、連絡網、代替手段、重要データの保全、復旧手順、訓練・見直しの仕組みなど、実際に動く設計が重視されます。
また近年は自然災害だけでなく、サイバー攻撃など「自然災害以外のリスク」も計画に含める考え方が明確になっており、IT依存度が高い企業ほど重要性が増しています。

BCPは、企業が緊急事態でも重要業務を継続・復旧するための包括的な計画で、規模や業種により内容は大きくなりがちです。
一方、事業継続力強化計画は中小企業向けに要点を絞り、国の様式に沿って「最低限押さえるべき項目」を整理しやすいフレームワークとして機能します。
つまり、ジギョケイはBCPの“簡易版”というより、BCPを作る前段の土台、またはBCPの中核部分を対外的に示すための認定スキームと捉えるとイメージしやすいです。

「認定」で何が変わる?顧客・取引先・金融機関からの信頼と加点要素

認定の価値は、第三者(国)の枠組みで「備えを計画化している」ことを示せる点にあります。
取引先の調達審査では、災害時の供給継続や情報管理体制が問われることが増え、認定は説明資料として使いやすい“共通言語”になります。
金融機関に対しても、事業停止リスクを下げる取り組みは返済能力の安定に直結するため、面談時の材料になります。
また、補助金・税制優遇・金融支援などの活用局面で、認定が要件または加点として扱われるケースがあり、資金調達コストや投資回収の見通しを改善しやすくなります。
信用度アップはイメージではなく、「リスクを把握し、対策と運用を回している」というガバナンスの証拠として積み上がるのがポイントです。

なぜ今「サイバー攻撃」まで含めた対策が必要か:事業停止・損失を回避するリスク分析

中小企業でも、受発注、会計、在庫、顧客管理、メール、クラウドなど業務の中枢がITに依存しています。
そのため、サイバー攻撃は「情報漏えい」だけでなく「業務停止」を引き起こし、売上・信用・資金繰りに直撃します。
特にランサムウェアは、データ暗号化により出荷・請求・生産が止まり、復旧に数週間を要することもあります。
さらに、取引先からの接続要件(セキュリティチェック)や委託先管理の厳格化が進み、対策の有無が取引継続条件になる場面も増えました。
ジギョケイにサイバー攻撃を組み込むことは、IT投資の優先順位を経営課題として整理し、対外説明可能な形にする近道です。

自然災害・感染症・サプライチェーン寸断:自社機能が止まる典型シナリオ

事業停止は「自社の被災」だけで起きません。
例えば、豪雨で倉庫が浸水し在庫が毀損する、停電で冷蔵設備が止まる、道路寸断で配送ができない、感染症で出勤率が落ちる、主要仕入先が被災して材料が入らない――など、複合的に発生します。
重要なのは、どのシナリオでも共通して止まりやすい“ボトルネック”を特定することです。
受注・出荷・請求・決済・顧客対応・生産計画など、止まると資金繰りに直結する業務を優先業務として定義し、代替手段(別拠点、在宅、手作業、代替輸送、代替仕入)を準備します。
ジギョケイでは、こうしたシナリオを前提に、実施する対策を短い文章で整理できるため、社内の合意形成にも役立ちます。

サイバー攻撃(ランサムウェア等)による業務停止:防御と復旧の優先順位

サイバー対策は「侵入を100%防ぐ」発想だけだと破綻しやすく、防御と復旧をセットで設計するのが現実的です。
優先順位は、①被害拡大を止める(隔離・アカウント停止)→②業務継続の代替(手作業・別環境)→③復旧(バックアップからのリストア)→④再発防止(原因究明・設定改善)です。
特にランサムウェアでは、バックアップが同時に破壊されるケースがあるため、オフライン/イミュータブル(改ざん困難)なバックアップ、復旧手順の訓練、復旧に必要な権限・媒体・連絡先の整備が重要になります。
ジギョケイに落とし込む際は、「重要データ」「復旧目標時間」「バックアップ方式」「初動連絡(社内・取引先・専門家)」を明記すると、実効性と説明力が上がります。

定量で見る損失:売上・信用・財務への影響をレポート化し評価する

信用度アップや企業価値向上を狙うなら、リスクを定量化して社内外に説明できる形にするのが効果的です。
例えば、停止1日あたりの粗利損失、復旧外注費、代替調達コスト、遅延違約金、顧客離反率、問い合わせ対応工数などを見積もり、想定シナリオ別に影響額を出します。
これにより「なぜこの投資が必要か」を経営判断として示せます。
また、金融機関や取引先に対しても、感覚論ではなく、RTO/RPO(復旧時間/復旧時点)や訓練頻度などの指標で説明できると評価されやすくなります。
ジギョケイは計画書自体が短くても、裏付けとして簡易レポート(A4 1〜2枚)を持っておくと、融資面談や取引先監査で強い武器になります。

事業継続力強化計画のメリット総覧:補助金・税制優遇・信用の向上を戦略的に活用

ジギョケイのメリットは「認定を取ること」だけではなく、投資・運用・広報を一体で設計できる点にあります。
防災設備、非常用電源、サーバ/クラウド、バックアップ、セキュリティ製品、訓練・教育などはコストに見えますが、停止損失の回避と資金調達の円滑化を通じて、実質的に企業価値を押し上げます。
さらに、補助金や税制優遇を組み合わせることで投資負担を軽減でき、実行に移しやすくなります。
加えて、取引先への提案書や会社案内に「認定」「対策」「訓練」を盛り込めば、価格競争ではない信頼競争に持ち込めます。
ここでは、代表的な活用ポイントを整理します。

補助金の活用ポイント:投資とコストの考え方、採択に向けた事前準備

補助金は年度・制度ごとに要件が変わるため、まずは「何を導入したいか」を先に決め、対象経費に合う制度を探す順番が失敗しにくいです。
サイバー対策ならバックアップ環境、EDR、UTM、ログ管理、訓練・コンサル費などが論点になりやすく、防災なら止水板、発電機、耐震、衛星電話などが候補です。
採択の観点では、①リスクと被害想定が具体的、②投資が重要業務の継続に直結、③運用(訓練・点検・見直し)まで設計、④費用対効果が説明できる、が重要です。
ジギョケイの計画内容を、補助金申請の事業計画(目的・課題・効果)に転用できるよう、停止損失の試算やKPIを準備しておくと通りやすくなります。

税制優遇(償却等)の概要:設備投資と強靭化を後押しする仕組み

税制優遇は、強靭化に資する設備投資の負担を軽くし、導入を促進するための仕組みです。
具体的な適用可否や対象設備は制度・時期で変動するため、最新の公的情報と税理士確認が前提ですが、考え方としては「防災・減災や事業継続に資する設備を導入した企業が、税負担面でメリットを得られる」設計です。
中小企業にとっては、キャッシュアウトを抑えつつ必要な設備更新を進められる点が大きく、老朽化設備の更新(停電対策、通信冗長化、バックアップ機器等)を“攻めの投資”に変えられます。
ジギョケイの計画に設備投資の目的と運用(点検・訓練)を紐づけておくと、社内稟議や金融機関説明でも一貫性が出ます。

融資・取引先評価のプラス:ガバナンスと体制の提示で信用度アップ

融資や取引先評価で効くのは、「事故が起きない」より「起きても致命傷にならない」設計があることです。
ジギョケイでは、責任者、連絡体制、優先業務、復旧手順、訓練計画などを整理できるため、ガバナンスの提示材料になります。
特にサイバー領域は、取引先からセキュリティチェックシート提出を求められることがあり、認定+具体策(バックアップ方式、権限管理、EDR導入、教育実施)をセットで示すと説得力が上がります。
金融機関向けには、停止損失の試算、保険加入状況、復旧目標、外部支援先(ITベンダ、SOC、弁護士等)をまとめた1枚資料が有効です。
「説明できる体制」はそのまま信用であり、企業価値の下支えになります。

形骸化を防いで企業価値向上へ:実効性・継続・改善が生む未来の機会

計画は作った瞬間がピークになりがちで、形骸化すると逆にリスクになります。
企業価値向上につなげるには、①実行(設備・設定・教育)、②訓練(机上/実地)、③評価(KPI・監査)、④改善(更新・再訓練)を回すことが必要です。
このサイクルが回ると、停止損失の低減だけでなく、取引先からの要求に迅速に対応でき、入札・新規取引・委託獲得で優位に立てます。
また、採用面でも「安全・安心に投資する会社」というメッセージになり、定着率やエンゲージメントにも波及します。
ジギョケイは“認定取得”をゴールにせず、運用の仕組みまで含めて設計することで、信用と成長機会を同時に取りにいけます。

認定までのロードマップ:事業継続力強化計画の策定プロセスと必要書類

認定取得は、難解な専門文書を作る作業ではなく、経営の優先順位を決め、実施する対策を整理して申請書に落とし込むプロジェクトです。
最短で進めるコツは、最初に「重要業務」「許容停止時間」「想定リスク」「最低限の対策」を決め、次に体制と運用(訓練・見直し)を設計することです。
サイバー攻撃を含める場合は、IT資産の棚卸しとバックアップ/権限の現状把握が早期に必要になります。
ここでは、申請前の整理から、モデルに沿った作成、審査で見られるポイント、公式情報の入手までを順に解説します。

申請前の課題整理:経営者が押さえるべき目的・リスク・優先業務

最初に経営者が決めるべきは「何を守る計画か」です。
売上を生む工程、顧客との約束(納期・品質・情報管理)、資金繰りに直結する請求・回収など、止められない業務を優先業務として定義します。
次に、自然災害・感染症・サイバー攻撃・サプライチェーン寸断の中で、自社にとって現実的なシナリオを2〜4個に絞り、被害の起点(停電、拠点被災、アカウント侵害、主要仕入停止など)を明確にします。
この段階で、許容停止時間(例:受注は24時間以内に再開、請求は3日以内など)を置くと、対策の優先順位が決まります。
現場任せにせず、経営判断として合意することが、認定後の運用と信用度アップに直結します。

策定プロセス(モデルに沿った作成):体制構築・手順・訓練・運用設計

作成はモデル様式に沿って進めると迷いません。
基本は、①推進体制(責任者・代行・連絡網)、②リスクと影響、③事前対策(設備/IT/調達/人)、④発災・発生時の初動(安否確認、指揮命令、外部連絡)、⑤復旧手順(優先業務の再開順)、⑥訓練・見直し、の流れです。
サイバー攻撃を入れる場合は、初動に「ネットワーク切り離し」「アカウント停止」「ログ保全」「ベンダ/保険/警察等への連絡」を含め、復旧に「バックアップからの復元手順」「代替環境での業務継続」を書けると実務的です。
訓練は年1回など無理のない頻度でよく、机上訓練(シナリオ読み合わせ)から始め、改善点を次回に反映する設計が形骸化を防ぎます。

事業継続力強化計画申請書の書き方:記載のコツと審査で見られる要素

申請書は「網羅性」より「具体性」と「整合性」が重要です。
審査では、リスクに対して対策が対応しているか、体制が実行可能か、訓練・見直しが計画されているかが見られます。
記載のコツは、抽象語を避け、誰が・何を・いつまでに・どの手段で行うかを短文で書くことです。
例えば「バックアップを実施」ではなく「基幹データは毎日差分、週次フルを別媒体に保管し、月1回リストア訓練を行う」のように、頻度と復旧確認まで書くと説得力が上がります。
また、優先業務と復旧手順の順番が、停止損失の大きさと一致しているかも重要です。
取引先・金融機関に見せる前提で、第三者が読んで理解できる文章に整えると、結果的に審査にも強くなります。

事業継続力強化計画申請書ダウンロード手順:中小企業庁の公式情報・無料ツール

申請書や手引き、記載例は中小企業庁の公式ページから入手できます。
まず「事業継続力強化計画 認定制度」「申請書 様式」「手引き」「記載例(サイバー攻撃)」などのキーワードで公式情報に到達し、最新版の様式かを確認してください。
あわせて、BCP作成支援の無料ツールやナビゲーション(例:BCPかんたんナビ等)を使うと、リスク洗い出しや優先業務整理の抜け漏れを減らせます。
注意点は、ネット上の古い様式を使わないこと、そして提出先・提出方法(電子/郵送等)が更新される可能性があることです。
申請前に、最新版の手引きで「自然災害以外のリスク(感染症・サイバー攻撃等)」の扱いを確認し、自社の計画に反映させると、実務と制度の両面で整合が取れます。

実効性を高める「具体的」対策集:防災・IT・サプライチェーンを統合して強化する

実効性を上げる鍵は、対策を“部門別”に分断しないことです。
防災は総務、サイバーは情シス、調達は購買…と分かれると、緊急時に指揮命令が混乱し、復旧が遅れます。
ジギョケイでは、重要業務を中心に、設備・IT・人・取引先の対策を一本のストーリーに統合できます。
ここでは、すぐに着手しやすく、かつ取引先や金融機関への説明材料にもなる具体策を、自然災害・サイバー・感染症・サプライチェーンの観点で整理します。
自社の規模に合わせ、まずは「最小構成」を作り、段階的に強化するのが現実的です。

自然災害対策:設備・拠点・在庫・代替手段の整備で回避する

自然災害は発生頻度が高く、停電・断水・通信断・物流停止が同時に起きやすいのが特徴です。
対策は「人命安全」→「重要業務の継続」→「復旧の加速」の順で設計します。
特に中小企業では、非常用電源や通信手段の確保、拠点が使えない場合の代替(在宅・別拠点・協力会社)を決めておくと効果が大きいです。
在庫や重要書類、サーバ機器の置き場所(浸水・転倒リスク)も見落とされがちなので、ハザードマップと照合して配置転換するだけでも被害を減らせます。
「設備を買う」だけでなく、点検頻度、燃料確保、鍵の管理など運用まで書くと、計画の信頼性が上がります。

  • 停電対策:UPS、発電機、燃料・充電手段、重要機器の優先給電
  • 浸水対策:止水板、重要物の高所保管、排水ポンプ、保険の見直し
  • 通信対策:モバイル回線の冗長化、テザリング手順、連絡網の二重化
  • 拠点代替:在宅手順、代替作業場所、協力会社との相互支援

サイバー攻撃対策:バックアップ、権限管理、EDR等の防御と復旧プロセス

サイバー対策は「侵入経路を減らす」「侵入後の横展開を止める」「復旧できる」の3層で考えると整理しやすいです。
中小企業で効果が出やすいのは、バックアップの強化、権限の最小化、多要素認証、端末防御(EDR/AV)、メール対策、そして復旧訓練です。
特にランサムウェアは、管理者権限の奪取とバックアップ破壊がセットになりやすいため、バックアップ先の分離(別アカウント・別ネットワーク・イミュータブル)と、復旧手順の文書化が重要です。
また、初動でログや証拠を消さない、勝手に再起動しない、外部専門家に繋ぐ、といった“やってはいけない行動”も決めておくと被害が縮小します。
ジギョケイには、技術用語を並べるより「何を守り、どう復旧するか」を中心に書くと伝わります。

領域最小構成(まずやる)強化策(次にやる)
バックアップ重要データの世代管理+別媒体保管イミュータブル/オフライン、月次リストア訓練
認証・権限MFA導入、管理者権限の分離PAM、特権IDの監査、ゼロトラスト要素
端末防御AV更新、OS/ソフトのパッチ運用EDR、脆弱性管理、アプリ制御
検知・対応連絡体制と初動手順の整備SOC/外部監視、ログ集中管理、演習

感染症対策:人員シフト、在宅運用、重要業務の継続体制

感染症は設備よりも「人がいない」ことが最大の制約になります。
そのため、属人化している業務の棚卸しと、代替要員の育成、在宅でも回る業務設計が中心になります。
重要業務については、最低稼働人数(ミニマム要員)を定義し、出勤・在宅・時差のシフトを事前に決めておくと混乱が減ります。
また、押印・紙書類・固定電話など“出社前提”の業務がボトルネックになりやすいため、電子化やクラウド化は事業継続の投資として位置づけられます。
サイバー対策とも連動し、在宅端末の管理、VPN/MFA、情報持ち出しルールを整備することで、感染症とサイバーの両方に効く体制になります。

  • 重要業務のミニマム要員定義(誰が休んでも回る状態を作る)
  • 在宅手順:端末・回線・認証(MFA)・問い合わせ対応の整備
  • 属人化解消:手順書、引継ぎ、クロストレーニング
  • 出社前提の排除:電子契約、クラウド会計、代表電話の転送/IVR

サプライチェーン対策:取引先分散・代替調達・情報連携で強靭化

サプライチェーンの弱点は「単一依存」です。
主要仕入先が被災・停止したとき、代替調達ができないと自社が無傷でも止まります。
対策は、代替先の確保、仕様の共通化、在庫の持ち方、そして緊急時の情報連携ルールの整備です。
また、サイバー攻撃は取引先経由で波及することもあるため、委託先管理(アカウント、接続、データ授受)を見直すことが、供給継続と情報保護の両面で重要になります。
ジギョケイでは、重要取引先のリスト化、代替手段、連絡体制を明記し、年1回の見直しを入れるだけでも実効性が上がります。
取引先に対しても「当社はこう備えている」と示せるため、信用度アップに直結します。

  • 重要仕入先の二重化(同等品・代替品の候補を事前に確保)
  • 在庫戦略:安全在庫、分散保管、リードタイム再設計
  • 緊急連絡:担当者不在でも繋がる連絡網、共有フォーマット
  • 委託先管理:接続権限、データ授受、セキュリティ要件の明文化

認定されました(取得)後が本番:定期的な見直し・評価・改善で企業価値を創造する運用術

認定はスタート地点で、企業価値を上げるのは運用です。
緊急時に動くかどうかは、平時の訓練・点検・更新で決まります。
特にサイバー攻撃は手口が変化し、クラウド設定やアカウント運用の小さな穴が致命傷になります。
そこで、KPIで状態を見える化し、経営会議の議題として定期的に扱い、改善を回す仕組みが必要です。
運用が回っている会社は、取引先監査やセキュリティチェックへの回答が速く、結果として新規案件の獲得や継続率向上につながります。
ここでは、定量管理、ガバナンス統合、形骸化防止の実務を解説します。

KPIで定量管理:復旧時間・停止時間・訓練実施率を測る

運用を回すには、測れる指標に落とすことが重要です。
代表例は、復旧時間(RTO達成率)、復旧時点(RPO)、停止時間、訓練実施率、バックアップ成功率、パッチ適用率、MFA適用率などです。
これらを四半期または半期でレビューし、未達の原因と改善策を決めます。
例えば「月次リストア訓練を実施できていない」なら、担当者依存を減らすために手順の簡素化や自動化を検討します。
KPIは多すぎると回らないため、最初は5つ程度に絞り、重要業務に直結するものから採用すると継続しやすいです。
定量で示せると、取引先・金融機関への説明も強くなり、信用度アップが“再現性のある成果”になります。

ガバナンスと統合:経営会議・リスク管理・情報セキュリティを一つの計画へ

事業継続は、総務や情シスだけの仕事にすると形骸化します。
経営会議で、リスク評価、投資計画、訓練結果、インシデント報告を定例議題にし、意思決定の場に乗せることが重要です。
また、情報セキュリティ規程、個人情報保護、委託先管理、労務(在宅規程)など、既存の社内ルールとジギョケイを統合すると、運用が一本化されます。
統合のメリットは、監査対応や取引先チェックへの回答が速くなること、責任分界が明確になること、投資の優先順位がブレにくいことです。
サイバー攻撃対応では、法務・広報・顧客対応も絡むため、部門横断の体制(指揮官、IT、総務、営業、広報)を明記しておくと、初動の遅れを防げます。

形骸化の典型パターンと対処:担当任せを防ぐ仕組みづくり

形骸化の典型は「担当者が異動して止まる」「訓練が忙しさで先送り」「設備は買ったが点検しない」「バックアップはあるが復元したことがない」です。
対処は、仕組み化と分担です。
具体的には、年次計画(訓練・点検・見直し)をカレンダーに固定し、実施記録を残し、経営会議でレビューします。
また、手順書を1人のPCに置かず共有し、代行者を必ず設定します。
サイバー領域は外部ベンダ依存になりやすいので、緊急連絡先、契約範囲、復旧時の役割分担(誰が判断し、誰が作業するか)を明文化しておくと、いざという時に揉めません。
「回る仕組み」を作ることが、認定を企業価値に変える最短ルートです。

事業継続力強化計画認定企業の一覧と事例:自社に近いモデルから学ぶ

ゼロから考えるより、認定企業の公開情報や事例から“自社に近い型”を見つけて真似る方が早く、抜け漏れも減ります。
業種が近い企業は、止まりやすい工程や重要業務が似ているため、対策の優先順位も参考になります。
また、サイバー攻撃の記載例は、どの粒度で書けば審査に通り、かつ実務に使えるかの目安になります。
一覧や事例を見るときは、設備投資の有無だけでなく、訓練・見直しの仕組み、取引先への提示方法まで確認すると、信用度アップに直結する運用像が掴めます。
ここでは、一覧の読み方、成功ポイント、広報への落とし込みを解説します。

事業継続力強化計画認定企業 一覧の見方:業種・規模・対策の傾向を分析

認定企業一覧を見る際は、まず自社と同じ業種・規模・拠点形態(単一拠点か複数拠点か)で絞り込みます。
次に、どのリスクを重視しているか(自然災害中心か、感染症・サイバーも含むか)を確認し、自社の弱点と照合します。
製造業なら停電・設備停止・部材調達、卸小売なら物流・在庫・決済、サービス業なら人員不足・顧客対応・情報管理が焦点になりやすいです。
サイバー対策の傾向としては、バックアップ、権限管理、教育、外部委託(監視・保守)を組み合わせている企業が多く、単発の製品導入だけで終わらせていない点が参考になります。
一覧は「自社の計画の妥当性チェック」に使うと効果的です。

事例でわかる成功ポイント:補助金活用・顧客信頼・再発防止の改善サイクル

成功事例に共通するのは、認定を“資金と営業”に接続している点です。
例えば、補助金で非常用電源やバックアップ環境を整備し、訓練で復旧時間を短縮し、その結果を取引先に提示して受注を安定させる、といった流れです。
サイバー面では、インシデント未然防止だけでなく、復旧訓練の実施や委託先管理の強化など、再発防止の改善サイクルを回している企業ほど、対外説明が強くなります。
また、顧客信頼の獲得は「うちは大丈夫です」ではなく、「RTOは何時間、バックアップは何世代、訓練は年何回」といった具体指標で示すことで実現します。
事例を読むときは、導入した施策よりも“運用の回し方”を抽出して自社に移植するのがポイントです。

広報・提案に使える材料:中小企業庁のチラシ、社内外への提示方法

認定は、社外への説明材料として活用して初めて信用度アップに直結します。
中小企業庁の制度紹介資料やチラシは、取引先に制度を理解してもらう導入資料として使えます。
その上で、自社版の1枚資料(重要業務、想定リスク、対策、訓練、復旧目標、連絡体制)を作ると、提案書や取引開始時の審査で強い武器になります。
社内向けには、緊急時の初動手順をポスター化し、連絡先や判断基準を見える場所に置くと実効性が上がります。
サイバー攻撃については、全社員向けに「怪しいメールの報告先」「端末隔離の手順」「やってはいけない行動」を簡潔に周知するだけでも被害が縮小します。
認定を“広報のネタ”で終わらせず、提案・採用・監査対応に転用する設計が企業価値向上につながります。

よくある質問(FAQ):申請・コスト・運用の不安を解説

ジギョケイは中小企業向けに整理されている一方で、「どれくらい時間がかかるのか」「費用はどの程度か」「サイバー対策は何から始めるべきか」といった不安が出やすい分野です。
ここでは、実務でよくある質問に対し、過不足なく進めるための考え方をまとめます。
ポイントは、完璧を目指して止まるより、最小構成で申請・運用を開始し、KPIと訓練で改善していくことです。
特にサイバーは、最初の一手(バックアップと権限)で被害規模が大きく変わるため、優先順位を誤らないことが重要です。

申請はどれくらい時間がかかる?必要な準備とプロセス

準備状況によりますが、社内の情報が揃っている企業なら、リスク整理〜申請書作成まで数週間程度で進められることがあります。
一方、IT資産の棚卸しが未実施、連絡体制が曖昧、優先業務の合意がない場合は、合意形成に時間がかかります。
効率化のコツは、最初に経営者が「優先業務」「許容停止時間」「対象リスク」を決め、担当者が様式に落とし込む分担にすることです。
また、サイバー攻撃を含めるなら、バックアップ方式、管理者権限、クラウド利用状況、外部ベンダ契約の確認がボトルネックになりやすいので、早めに着手します。
申請後のやり取りも想定し、根拠資料(簡易レポート、構成図、訓練記録の雛形)を用意しておくとスムーズです。

コストはどこまで必要?投資対効果と補助金の組み合わせ

コストは「計画作成費」と「対策実装費」に分けて考えると整理できます。
計画作成は内製でも可能ですが、サイバーや法務・保険まで含めて短期間で整えたい場合は外部支援を使う選択肢もあります。
実装費は、停止損失の見積もりと比較して優先順位を決めます。
例えば、停止1日で粗利が大きく失われる企業ほど、バックアップ強化や冗長化の投資回収は早くなります。
補助金・税制優遇を組み合わせると、初期投資の負担を下げられるため、まずは「やりたい対策のリスト」と「期待効果(停止時間短縮、損失回避)」を作り、制度要件に合わせて組み替えるのが現実的です。
重要なのは、製品を買うことではなく、復旧できる運用(訓練・点検)まで含めて投資対効果を評価することです。

サイバー攻撃対策は何から着手?最小構成での防御・バックアップ

最小構成で効果が大きい順に並べると、①バックアップの分離と復元確認、②MFAと権限最小化、③パッチ運用、④メール訓練と報告ルール、⑤端末防御(EDR/AV強化)です。
特に①は「復旧できるか」を決めるため最優先です。
バックアップは“取っている”だけでは不十分で、復元できること(リストア訓練)と、攻撃者に消されないこと(別媒体・別アカウント・オフライン/イミュータブル)が重要です。
次に、MFAと管理者権限の分離で、侵入後の横展開を抑えます。
この最小構成をジギョケイに明記し、訓練頻度と責任者を決めるだけでも、取引先への説明力が大きく上がり、信用度アップに直結します。

まとめ:認定×補助金×実効性で信用を高め、中小企業の企業価値向上を実現する計画へ

事業継続力強化計画は、災害・感染症・サイバー攻撃といった多様なリスクに対し、中小企業が「重要業務を守るための実装」を整理し、国の認定で対外的に示せる制度です。
認定は補助金・税制優遇・金融支援の活用を後押しし、投資を実行に移しやすくします。
そして、計画を運用(訓練・KPI・見直し)まで回せば、取引先・金融機関・採用市場に対して説明可能なガバナンスとなり、信用度アップと企業価値向上に直結します。
特にサイバー攻撃は業務停止を引き起こすため、防御と復旧をセットで設計し、バックアップと権限管理から最小構成で始めることが現実的です。

今日からできる第一歩:リスク分析→体制→申請書作成→運用の順で進める

今日からの第一歩は、完璧な文書作りではなく、意思決定の順番を守ることです。
まず、想定リスク(自然災害・感染症・サイバー・供給停止)を2〜4個に絞り、重要業務と許容停止時間を決めます。
次に、責任者と代行、連絡体制、初動手順を定め、最低限の対策(バックアップ分離、MFA、非常用電源など)を優先順位付きで並べます。
その内容を申請書様式に落とし込み、訓練と見直しの予定をカレンダーに固定します。
この順で進めると、申請のための計画が、そのまま“動く計画”になり、認定後の形骸化も防げます。

次のアクション:中小企業庁情報を確認し、事業継続力強化計画認定を目指す

次のアクションは、公式情報で最新版の様式・手引き・記載例(サイバー攻撃の例を含む)を確認し、自社の現状(IT資産、バックアップ、権限、拠点リスク、主要取引先)を棚卸しすることです。
その上で、最小構成の対策を決め、申請書を作成し、訓練・見直しまで含めた運用設計を行ってください。
認定はゴールではなく、信用を積み上げるためのスタートです。
認定×補助金×実効性の三点セットで、止まらない会社・説明できる会社へ進化させ、企業価値向上につなげましょう。

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